
- 虎ノ門大学院ブログ
- 2025年02月15日
古河電気工業株式会社 代表取締役社長の森平英也氏をお招きし、設立20周年記念セミナーを開催しました。
KIT虎ノ門大学院イノベーションマネジメント研究科の設立20周年を記念し、特別セミナー『知財?無形資産経営を推進する古河電工の人づくり、強みづくり、価値づくり』を、2025年1月30日(木)に開催しました。
ゲスト講師としてご登壇いただいたのは、古河電気工業株式会社(以下、古河電工)代表取締役社長の森平英也氏。知的財産部で10年以上の在籍経験があるという、上場企業の社長では非常に珍しいキャリアをお持ちでいらっしゃいます。知財を単なる管理業務ではなく、経営戦略の中核に据えることの重要性について、自らの経験を交えながらお話しいただきました。
関心の高さを反映して、100名の定員を大幅に上回る申し込みが早い段階で入り、最終的には対面参加とオンライン参加を合わせて150名もの方々にご参加いただきました。今回のブログ記事では当日のお話の一部をご紹介します。
■ 「人づくり」「強みづくり」「価値づくり」の三位一体 |
連結の売上高が1兆円を超え、5万人以上の従業員数を誇る古河電工が、まず重視しているのは「人づくり」。人は企業にとって最も重要な資産であるという考え方です。

知財専門家だけが知財を担うのではなく、事業部門やエンジニア、マネジメント層を含む、全社員の知財リテラシー底上げを目指しているとのことでした。権利化やノウハウ管理のスキルを習得するだけでなく、顧客ニーズや市場を捉えながら競合分析や戦略的な知財活用ができるといった総合的な知財活動が出来る人財を育てることで、全社の競争力を高めようとしています。
また、「心理的安全性」を高めるための仕組みづくり、雰囲気づくりを社内で推進し、誰もが遠慮なく意見を出せる文化を醸成しているとのことでした。新技術や新事業のアイデアは、こうした環境があってこそ活発に生まれやすくなるという考えにもとづくものです。

知財部で10年以上のキャリアを積んだ森平英也社長
次は「強みづくり」です。同社の知財戦略は、「IPランドスケープ*による経営?事業戦略策定力の強化」「オープン&クローズ戦略による知的資産活用」「知財リスクの低減による事業遂行の安定化」の三本柱を軸に実行されています。
*特許情報や非特許情報、さらには技術?市場動向を組み合わせて俯瞰的に整理し、そこで得られる洞察をもとに事業戦略の方向性を明確化する手法
また、ポイントとなるのが「リスクミニマム」と「チャンスマキシマム」の2つの観点です。侵害リスクや訴訟リスクを抑えつつ、新規事業や製品開発で有利なポジションを築くために、知財や無形資産をどう活用するかが重要になります。

例えば、IPランドスケープの活用については、経営?事業戦略策定力のための重要な手法として定着させるため、サステナビリティ指標に組み込み、古河電工グループの事業活動において重要な分野ごとに対象を定め、それらに対する100%の実施を目標化しているとのことでした。
最後に、「人づくり」「強みづくり」がどのように「価値づくり」に結びついているのか、その具体例として、半導体製造用テープや、インフラレーザの事例についてご紹介いただきました。
■ 知財と経営の連携やAI活用の推進の可能性 |
セミナーの後半では、KIT虎ノ門大学院の三谷宏治教授、杉光一成教授も加わり、森平社長とのパネルディスカッションが行われ、知財と経営の接点について議論が交わされました。
杉光教授の「従来の知財部門の役割を超え、経営企画や事業企画部門との連携が重要」とのコメントに対し、森平社長は「知財部門で培った視野の広さが、経営企画へ異動したときに強みになった」とご自身の経験を踏まえて回答されました。

経営戦略と知的財産、両側面から古河電工の取り組みを聞いた
また、三谷教授からは「生成AIの進化が知財業務や企業戦略にどう影響するか?」という問いが投げかけられました。これに対し、森平社長は「知財の検索?分析、特許の明細書作成など、生成AIの活用は知財業務の大幅な効率化をもたらすが、それだけではない。新たなアイデア創出にもつながる可能性がある」「AIをいかに使いこなせるかが、今後の競争力を左右する」とコメントされました。
あっという間の90分でしたが、知財は単なる管理業務ではなく、企業の成長を支える資産であり、知財の専門家だけでなく、企業の経営層や事業企画担当者にとっても重要なテーマであることを再認識する機会となりました。
KIT虎ノ門大学院では、今後もこうしたイベントを開催してまいります。また、2025年度の新設科目として「生成AIとビジネス?知財特論」を開講する予定です。ご自身が知的財産領域あるいはビジネス領域でプロフェッショナルへの道を歩みたいという方は、ぜひ本学への進学をご検討ください!